弊社の京仏具は、100年以上前より伝わる技術を伝統工芸士が、ひとつ、ひとつ丁寧にお造り致しております。京仏具は一人の職人が全てを作るのではなく多くの職人による分業で成り立っております。その分野に特化した技術者の集合体なのであります。価格は、少々お高くつくかも知れませんが、品質や耐用年数などをお考え頂きますと決してお高くないお品でございます。
本ページでは、仏具をお求め頂きます時のチェックポイントを明記させて頂いております。お仏具をお求め頂きますときの判断材料としてお読み頂ければと思っております。
お仏具を調達するための大切な情報です。
寺院用お仏具を調達にするにあたり
寺院用お仏具は、どこで求めても同じなのでしょうか。例えば、色や形が同じでよいのであれば、お値打ちに求められる海外製品もあります。また、国産品であっても本漆塗りのお仏具もあれば、合成塗料で仕上げたお仏具もございます。全て、お仏具としての機能は備えております。どのお仏具も否定も肯定もできません。このように、様々なお仏具の製作方法があり、様々な入手方法があることをお知り頂きたいのです。また、このような手法をしっかりと伝える仏具店をお選びいただく事が大切であります。
仏壇店と仏具店は違います。
今から約30年程前には、寺院用お仏具を扱っている仏壇店は、そう多くは存在しませんでした。理由は、製作にあたり専門的な知識が必要であったからです。本来、お仏具はご本堂の大きさや設計バランス、御本尊様の大きさ、住職様の宗教作法の行い易さ、外陣からの視線など様々な条件に合うように製作されなくてはなりません。そのため、一品ずつ手作りで製作されてきた訳であります。しかし、現在は卸問屋より完成品を求めることができるようになりました。いわゆる既製品であります。しかし、本当の仏具店は、お仏具の製作過程のことを理解しているのは勿論のこと、ひとつ、ひとつのお仏具の使 用方法を理解して製作致します。従いまして仏壇店と仏具店は違うのであります。やはり、寺院用お仏具を求める時は専門の仏具店で求めることをお勧めします。
お仏具の製作の基本につきまして
お仏具の形状の基本は何処からきているのでしょうか?それは各派御本山の様式からです。特に真宗寺院寺院の基本は、御本山様式です。これは、お内陣の造作木工事でも同じです。御本山には、阿弥陀堂と御影堂がございます。一般的には、阿弥陀堂の様式を模す事が多いです。ご寺院様に適切な御本山様式のお仏具をご提供するためには、製作を担当する仏具店の知識や製作ノウハウは重要となって参ります。これは、ご修復お仏具に於きましても同じす。様々なご事情により、御本山様式ではないお仏具をお使いのご寺院様もおられます。ご修復の際に御本山様式への改造をご提案させて頂くことも仏具店としては大切な仕事となります。
弊社は、卸問屋から既製品の京仏具を仕入ることはありません。仏具職人と契約をしお仏具の製作にあたっております。木地師、塗師、金箔押し師、錺金具師など各工程ごとの専門職とです。このことは、中間業者を必要としないことになり、高品質のお仏具をお値打ち価格でご提供できることとなります。この特化した職人集団にご寺院様のご要望を伝え、プロデュースするのが本来の寺院仏具店の立ち位置です。ご寺院様と職人とのパイプ役です。このプロデュースには御本山の様式を把握し、仏具製作の各工程を理解する力が必要です。
お仏具を調達するためのチェックポイント
『木 地』材木入手が困難になってきています。使用材を十分にチエック!
木地とは、お仏具の形を製作する工程のことを言います。ただ単に形を美しく作るだけではありまん。将来ににご修復されることを考え、釘やビスなどをできるだけ使用せず、組立て式で製作していきます。この製作には、昔ながらの工法を用います。それは、原寸法を目盛った「ツエ」という物差しをその都度に作り木取りをしていきます。設計図はなく木割法とツエを使い製作します。これが伝統産業と言われる由縁です。ご修復のお仏具の場合は、破損している所だけを直すのでなく、再度、長きに渡り、ご使用に耐えられるお直しを目指します。御宮殿のご修復であれば、垂木や屋根流れを外し、内部より補強をし、再度取り外した部品を取付けるというお直しをします。木地のお直しに注意を払い十分に行わなければ、いくら漆を塗ったり純度の高い金箔を使用しても耐久性は弱く本当のご修復とは呼べません。ご修復と色艶だけの復元の違いをご理解下さい。
『本漆塗り その1』下地材を吟味。カシュー塗りとの見極めを!
塗師・・・本漆塗り、天然素材を丁寧に塗り重ねていきます。
漆塗り工程は、大きく別けて2つの工程があります。ひとつは下地塗装、ひとつは仕上げの漆塗りです。漆塗りの前工程を下地といいます。この下地が重要な工程です。一般的な下地は砥の粉と膠を混ぜた泥状のものをヘラでしごいて木地の上に乗せていく工程です。この工程を何回か繰り返した後、初めて漆を塗ります。近年では、サフェーサーという科学塗料を使用した下地もあります。下地は、幾度か塗り重ね平面を作っていきます。この圴一に平面を作る作業が漆塗りの上手下手を決定すると言っても過言ではありません。皆様もご経験があろうかと思いますが、完成した漆塗り製品にご自分のお顔が歪みなく映っている姿をご覧になられたことがあると思います。これは、この下地工程が丁寧に行われ平面ができている証拠であります。反面、映っている顔が歪んでいるのは下地に問題が有るという事です。これを、漆塗り製品の良し悪しの判断のひとつです。
『本漆塗り その2 蝋色』
漆の深みのある色はどのように出されるのでしょう。蝋色という技法をご存知ですか?漆は、元来艶のないものとお考え下さい。では、漆の深みのある艶は、どのように出されるのでしようか。方法は2つあります。ひとつは、仕上げ漆に油分を混ぜ艶を出す方法(立て塗り)、もうひとつは、手の平で磨き上げて艶を出す方法(蝋色)があります。このふたつの工法の使い分けは、漆塗りを行う箇所やご予算に応じて使い分けを致します。できれば、後者の蝋色という技法で漆の艶を出すことをお勧め致します。
本来の漆の艶を出す技法・・・蝋色研ぎ出し
塗り上がった漆に艶、深みをもたらすのが蝋色という技法です。漆面を炭で研ぎ、生漆を摺り込む、この工程を幾度か繰り返し最後に鹿の角を焼成した粉をまぶして、手の平や指先で磨いて仕上げます。魔法をかけたかのように角粉で磨いた瞬間にあの深みのある艶が現れてきます。実は、この技法は、艶を出すだけが目的ではありません。炭で研ぎ、生漆を摺り込むことにより、漆の密度が高まり高耐久性にも繋がっていきます。できるだけ、この技法を用いることがお仏具全体の寿命を延ばすことにつながります。須弥壇や前卓の下水板など大きく広い漆塗り場面に多く使われています。
漆塗りは、書面で本漆塗りと一行書きましても、下地を科学塗料地で漆に合成塗料を混入した合成漆で仕上げたものから、下地から漆を用いて仕上げは蝋色で艶を出したお仏具まで多く存在します。おのずと価格も大きく違ってまいります。3~4倍くらいの価格差が出てまります。 ご予算を有意義にお使い頂くために、お仏具一品ずつの工法検討も大切となってきます。
『純金箔押し』 金の純度より、製法が大切!手打ち金箔を是非ご採用下さい。
金箔は、金箔を張る面に接着剤を塗布し、金箔を置いていき真綿で押さえつけて張っていきます。金箔押しといわれる由縁がここにあります。金箔を張るのに大切なの接着剤です。本漆、合成塗料、ニスなど様々なものがあり、密着度の強さは、本漆が群を抜いて強いです。ただ、本漆を接着剤として使用する場合は、熟練された職人の勘と技が必要です。それは、漆塗りと同様に接着剤の本漆も空気中の湿度を得ながら硬化していきます。金箔を置いていく最中も硬化しているのです。その日の湿度を経験で感じ、漆の塗布加減を調整する必要があります。金箔押しは、張るより乾かす方が難しいといわれるくらいです。また、大きな平面に金箔を張る場合は、塗り上がった漆製品の表面を炭で研ぎ、すりガラス状態にします。このことを摺上げといいます。このことで金箔の密着度が高まると共に落ち着いた金箔の輝きに仕上ります。このような技法を用いた金箔は簡単に剥げることはありません。また、金箔の上から漆を摺り込むコーティング技法、漆養生という仕上げもあります。金箔貼りは、手打ち金箔を使い本漆を接着剤を使用する工程が最良であります。
『錺金具』 プレス金具か手打ち金具かの見極めが重要! 寸法割りも大切。
金属板を自由に操るのが錺職人です。
錺金具の工程は、まず出来上がった木地の型取りから始まります。和紙に蝋墨で曲面や複雑な形状部分の型を採取します。また、その際にお仏具の全体寸法も採寸致します。仏具の錺金具には、一定の法則があります。錺金具を打つ面積の4割~5割を錺金具の面積で占めるという法則です。この法則に従い1枚の錺金具の寸法を決定します。プレス金具を使用する場合は、近似値寸法の金具を使うことになりますので、厳密にはこの法則になっていないことがあります。採取した型を銅板に移しとり、彫金、仕上げ切断、メッキの順に加工をしていきます。金メッキ後の金具には、カリヤスという各職秘伝の薬草を塗り、低温で焼き付けて仕上げます。これは、メッキ面の保護と金箔との色の調和を考えて、やや紅目に着色します。これは、京都独特の技法であります。出来上がった錺金具は、部材の大きさに合わせた金鋲で打ちお仏具の完成となります。
『鋳造品』 五具足/輪灯など 鋳造技法や仕上げで大きく価格が変わります。
堅い鋳物ですが、彫金を施したり炭で研磨したり致します。
鋳造品のイメージは、堅くて重たいとうイメージであろうかと思います。しかし、鋳型から出したお品は鋳肌が荒くそのままでは製品にはなりません。ヤスリやペーパーなどで鋳肌を整え、成形していきます。場合によりますと堅い鋳物を炭で「ツルツル」になるまで研ぎおろす場合もあります。そして整えられた鋳肌の上へ彫金にて模様を刻んでいきます。仕上げは、漆の焼付け塗装、素材の輝きを出す研磨仕上げ、金箔や金メッキを施す仕上げなどがあります。この中でも鋳物に金メッキを施すことは慎重に行う必要があります。それは、鋳物自体に素穴があり、そこへメッキ時に使います酸が溜まり、条件によりましてはそれが緑青に繋がることがあります。また、金箔を張る場合には、下地に箔押し用の焼付け漆下地が必要となってきます。また、最高の仕上として煮色があります。これは特殊な薬品の中で製品を炊き込み、素材自体の色味を出す技法です。半永久的に色が剥げれることはありません。
『木彫刻』 海外製品が多くあります。仏具店と綿密な打ち合わせがカギ!
原図を描いて進めていきます。
彫刻をするたびに原寸図を描き進めていきます。その都度に原図を描きますので、一つとして同じ彫刻はありません。また、ご寺院様のリクエストを受けることも容易となります。実例ですが、唐獅子の右前足を上げて欲しい、遊び心で牡丹の葉に虫をとまらせて欲しいなどのリクエストが過去にあったことがあります。また、手作りで対応させて頂きますので、リクエストをお聞きしたからと言って価格が上がることは、一般的にはございません。海外製品や国内製品でも画一的に製作している工房では、このようなリクエストには対応が困難で価格の変動も起きるかもしれません。
『彩 色』 下地材と絵具の種類が重要! できるだけ自然素材の使用を。
まず、施主様のご意向をお聞きし下絵を描きます。ご確認後に図案を描きます。彩色は、まず、絵具作りから始まります。顔料に少しずつニカワを混ぜ研いで製作します。そして、対象物に色を施すわけですが、色の重なりなどを考え色を入れていきます。また、建造物の場合は下地として胡粉地という貝を焼成した絵具を先に塗り絵具下地作りを行います。そして、複雑な形状物には直接、また、平坦な場面には、工房で鳥の子紙に描いた物を表具していきます。彩色の仕上げには、平彩色と盛上げ彩色があり、適材適所を判断して仕上げを決定していきます。
近年では、印刷で仕上げた彩色絵もあります。特に内装表具に使うものが多具あり、蓮水彩色、柱巻き下げ、天人画などがあります。お値打ちに内陣彩色工事が完成致しますが、画一的な仏画表現となります。
『壁面表具』 下張りに使用する和紙をチェック 上張り紙の種類は多種存在。
チェックポイントまとめ
【木 地】 檜材を使用するのが最高。今まで主流の紅松材の入手が困難になってきています。
【漆塗り】 塗りの良し悪しは下地で決定。上塗りは、波目がない、ブツブツがないがベスト。
【金 箔】 純度よりも製法が肝心。手打ち金箔を生漆で張ることが一番の長寿命。
【錺金具】 プレスと手打ちの見極めが重要。法則に則った寸法割りは、全体の調和を醸し出す。
【鋳造品】 多くの鋳造、仕上げ方法があります。品質の見極めは、仕上の丁寧さ。
【木彫刻】 海外製品が出回ってます。国産であっても彫刻の細かさで価格は大きく変わります。
【彩 色】 絵具が大切。自然素材を使用した絵具は永遠の色彩を放ちます。
【表 具】 下張りの和紙と回数が重要!上張り紙は多種存在。紙の選定が大事です。
【摺り上げおよび蝋色研ぎ出し】
本漆塗りが完成しますと、漆の艶出し工程へ移ります。漆は、本来艶の無い塗料です。その漆に漆黒の深みのある艶を与えるのが蝋色(ろいろ)研ぎ出しという技法です。塗り上がりの漆の表面を炭で研ぎ、漆を刷摺り込む工程を幾度も繰り返します。そして、最後に鹿の角を焼成して作られた磨き粉を用いて、手の平で磨き上げます。一瞬であの深みのある艶が現れます。また、金箔を張る部分には、擦り上げという技法で下地を整えます。漆塗り面は刷毛目や節(ふし)などあります。それらを取り除くと共に漆面をすりガラス状態にします。そのことで、金箔の密着度が増します。また、金箔の輝きも落ち着いた輝きとなります。この工程を省く仏具店も多いですので、ご注意ください。
お内陣の壁面などに鳥の子紙を張ることを表具と呼んでいます。壁面は、シナ合板にて仕上げていただくのが最前ですが、漆喰壁など合板大工仕事ができにく場合は、合板の代わりに表具で下地を作ることも可能です。一般的な表具の工程は① 楮和紙を袋張り工法で二重張りをします。② その上に本紙となる鳥の子紙を貼ります。③ 仕上げは、周囲に黒塗りの四分一を打ちます。これで終了です。大切な工程は②の袋張りという技法で下張りを仕上げることです。この袋張りを行うことで、下貼りが湿度などを感じ収縮をし本紙を常に正常の状態に保つことができるのです。本紙は、本金紙や中金紙など多くの種類がありますので、紙の厚みなどを吟味して採用していただくことをお勧めいたします。